Presented by サッポロビール株式会社

黒ラベル「大人エレベーター」 CMプランナー・多田琢さんが考える「大人」とはPR

5年連続で缶商品の売り上げを伸ばしている、サッポロ生ビール黒ラベル。特に20代・30代に人気のあるビールです。

そんな黒ラベルの人気を下支えしているのが、俳優の妻夫木聡さんがメインキャラクターとして、さまざまな魅力ある大人たちに出会うCM「大人エレベーター」だ。妻夫木さんが架空のエレベーターに乗り、押したボタンの階数に応じた年齢のゲストの大人たちに出会い、黒ラベルを味わいながら、「大人とは?」をテーマに本音で語り合うという内容。妻夫木さんの問いかけに、毎回、ゲストが真剣に答えていく姿が印象的です。

そのCMをつくっているクリエイティブエージェンシー「TUGBOAT」のクリエイティブディレクター/CMプランナー・多田琢さんに、CMに込めた思いや制作秘話、そして、多田さん自身が考える「大人とは何か」を聞きました。

ずっと変わらないこだわり、覚悟、生き方さえ感じる、大人のビール

多田さんが「大人エレベーター」のCM制作に携わったのは2009年。サッポロビールが黒ラベルの新しいキャンペーンを始めようと、競合コンペを開催し、そこに手を挙げ、採用されたことがきっかけでした。

最初に考えたことは、黒ラベルとは何なのかということでした。


「かつての『男は黙ってサッポロビール』というキャッチコピーからも分かるように、サッポロビールはそれまで、こだわりがある大人のビールというものを考えてきたんだと思うんです。いろいろとキャンペーンで形を変えてきたけれども、こだわりのある大人に対して、おいしいビールを提供する。そこは変わらなかった」

そして、他社のビールとの比較から見えてきたのは、「黒ラベルには心がある」という結論でした。

「飲みごたえや泡の喉越しの強さも大切ですが、飲む人の気持ちを大事にするような、人間味のある黒ラベルがいい。黒ラベルそのものが、愛すべきブランドで、黒ラベルを飲んでいる自分が好き。そういうブランドであるはずだと思ったんです。星のマークが変わらないように、ずっと変わらないでい続けるこだわりや覚悟、そういう生き方のようなものがあるブランドなんだと」

今、憧れるべき大人はいるのか

その思いを伝えるために、「大人」というものを今一度考える必要がありました。いまの若者にとって、本来憧れの存在であるべき大人がいるのか。

「今、僕らの世代が、子どもや若者の憧れになっているのかというと、なっていないと思うんですよね。今の若者は夢がないといいますけれど、そうさせたのは僕ら。大人たちの背中を見て若者は育つのに、その背中が頼りないものだったり、魅力がないものだったりしませんかという思いが当時からあって」

「僕の世代で格好いい大人と言ったら、松田優作、開高健、寺山修司、ジョン・レノンとか。そういう憧れる人たちがいた。でも、実は、今もいるんだよ。その人たちはこんな考え方をして、こんなことを言っているよというのを若い人が見て、『あ、大人って悪くないな』と思ってもらえれば、『大人』をコンセプトにしているサッポロビールが生きると思ったんです」

「『ああいう大人になりたい』『ああいう黒ラベルユーザーになりたい』と思って、黒ラベルを買ってくれる人が増えるのが一番いい。そして、それをちゃんと受け止める黒ラベルであってほしい。そう思いました」

矢沢永吉、村上春樹、松田優作、テリー伊藤、リチャード・ギアに共通するもの

脈絡なく次々と大人が来るだけでは、そのCMの核がなくなってしまいます。いろいろな大人のいろいろな考え方や角度を見せるためには、それらを串刺しにするものが必要でした。そして思いついたのが「年齢」という切り口でした。

「ちょうど(09年に)ゴルフの全英オープンで、59歳だったトム・ワトソン(アメリカのプロゴルファー)が準優勝したんですよ。その時のスポーツ紙の記事にね、トム・ワトソンと同い年ということで、矢沢永吉、村上春樹、松田優作、テリー伊藤、リチャード・ギアの名前があったんですよ。年齢以外絶対接点がない人たちでしょう? でも、年齢ということでくくると、一緒に出てくるはずのない人たちが出られる理由になる。年齢を一つのフレームにすれば、無尽蔵に企画はできるし、わかりやすいと思ったんです」

「エレベーターならば数字が付いているし、ボタンを押せばそこに行けるのでわかりやすいなと、割とすんなり思いつきました。タイムマシンのようなものもあるのかもしれないですが、その場合、年代を指定する必要があって。その人の20歳の時に会いに行くというのならいいかもしれないんですけど、今のその人に会いに行くには、エレベーターの方がいいだろうと考えました」

妻夫木聡さんを選んだ理由と、出会う人々を選ぶ基準

大人エレベーターに乗るメインキャラクターは、俳優の妻夫木聡さん。なぜ妻夫木さんをキャスティングしたのかと問うと、多田さんはこう話します。

「大人エレベーターは、一種のファンタジーで、物語なんです。ファンタジーの中の主人公が、いろいろな人に出会う物語に見えないと、ただのテレビのインタビュー番組と変わらない。そうした時に、映画の主人公的に見えて、旅に出かける物語なんだと見ている人に匂わせることができる若い役者さんがいいと思いました。それと、相手と何時間も話さなくてはいけないので、変な癖がない、話しやすい人が良かった」

「そういう意味で、妻夫木さんは、とてもフラットな場所にいてくれていながら、物語の進行や世界に身を委ねてくれて、自分のものにしすぎない。だからこそ、映画やドラマでいろいろな役ができるんだと思うんですけど、見ている人をワクワクさせてくれて、相手の人も気を許して喋っちゃう人で、適役なんです」

一番にこだわりたいのが、大人エレベーターに登場する人、つまり妻夫木さんと対話をする「憧れの大人」を選ぶことでした。

「大人だったら誰でもいいわけではないので。黒ラベルらしさというのもあるし、嘘ではなく、正直で、信用できる人に語ってほしい。僕らが考える、格好いい大人で、タイミングやスケジュールがあって、出演してくれるかどうか。作品ごとに狙いがあるわけではなく、その出演してくれる人の言葉をどれだけ引き出せるかが重要なんです。だからこそ、人選はすごくこだわってきました」

1人のゲストあたり撮影時間は3時間ほど。聞きたい質問を事前に用意をするものの、期待していた以上の答えが出てくることも多いといいます。

例えば、最新作に登場する脚本家の三谷幸喜さん。三谷さんに「脚本の世界で、AIが人間の能力を凌ぐことがあり得るかどうか」尋ねた際、三谷さんは「喜劇ではあり得る」と言ったそう。


「僕は言わないと思ったんですよね。物語という一番ソフトで、人間がAIに一番勝てそうな世界で、AIが勝つ可能性があるというのは、なんとなく思っても言いたくないことかなと思ったんですけど。意外と正直に『脚本はメソッドや法則があるので、それをAIが研究したら喜劇ではあるかもしれない』と。『喜劇』ではと分析しているのも三谷さんらしいですよね」

「また、妻夫木さんが『100%新しいストーリーは存在するのか』と聞くと、三谷さんは最初、『存在はしない』と言った後、少し考えて『すると思う。だけどそれは僕には考えられないんだ』と。すごく良かったですね。正直な人だなって」

自分以上に大切なものができて、弱くなる。それが大人だと思う。

多田さんが、CMを作るにあたって大切にしていることは「自分が見たいものを作る」ということだと言います。

「僕は凡人なので、自分が面白いと思っていたり、ワクワクしたりするものは、そんなに特殊だと思っていない。その中で、ワクワクできるかできないか。心躍るものはみんなに見てほしいから。どこかを偽っていると、辛いし、不誠実な感じがしちゃって。不誠実なまま仕事を終わらせたくないですからね」

「大人エレベーターは、僕が、好きな人たちから聞きたいことが聞けることを毎回期待して撮影をしています。人生の、というと大袈裟ですが、生活していく上で、みんな悩みながら生きているし、正解なんて誰もわからない。その中にちょっとしたアドバイスというか、そういう考え方があるんだとわかると楽になったりする。そういうものが何か提供できるといいなと思っています」

「本当に30秒ではもったいないくらい。30分ぐらい一つの番組として聞いてほしいなという言葉がたくさんありました。機会を逸してしまったのは、樹木希林さんと、高倉健さん。お話を伺いたかったですね」

宮藤官九郎さん、リリー・フランキーさん、ビートたけしさん、奥田民生さん、古田新太さん…。これまで数々の「大人」と出会って、語ってきました。

そんな多田さんが考える大人とは?

多田さんは「きっとね、その質問の中に答えがあると思っていなくて。幸せとはなんだとか、名誉とはなんだとか、そういう答えの中に、大人というものが隠されていると僕は思っています」と話し、こう続けます。


「例えば、子どもと大人はどちらが強いのかと言ったら、僕は子どもの方が強くて、大人はどんどん弱くなっていると思うんですよね。守るものができてくるというか、自分以上に大事なものが存在したら大人なんじゃないか。それは年齢は関係ない。子どもはやっぱり自分が一番大事だし、自分よりも誰かを守ろうということは思っていないけれども、それが出てきてしまうと、責任や覚悟が生まれてくる」

「そういうことの積み重ねで大人は弱くなっていくんだろうなぁという気がします。いいことなのか、弱さなのか、それはわからないですけど、でも守るべきものがあるというのは、子どもには経験できないこと。守るべきものがないまま一生を終えてしまうと、それはそれで寂しいな、自分よりも大事なものがあったほうが幸せなんだろうなと思うんですよね」

撮影で、ビートたけしさんに、妻夫木さんが「強さとは?」と聞くと、たけしさんは「鈍感さだと思う」と答えたと言います。「その人が鈍感なだけなんだ」と。

「たけしさんは、ある種、自分も『弱い』と認めている。弱いからこそ、人の気持ちに敏感だと。そういう分析ができるのが格好いいなと思いました。覚悟や義務、責任によって大人になって、弱くなっていく。そこから目を背けていって強そうに見えるのは、ただただ鈍感だ、と。たけしさんから学んだのは、背伸びしないで身の丈に合った大人でいること。それくらいでいいんじゃないかと思ってます。」

多田琢(ただ・たく) 1963年9月生まれ。CMプランナー。1987年に早稲田大学第一文学部卒業後、電通に入社。99年、クリエイティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立。TCC最高賞、ACC金賞、ACC技術賞受賞。

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