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金沢伝統の金箔製造技法、ユネスコ無形文化遺産へ

※本記事は2020年11月18日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

神社仏閣や美術工芸品に欠かせない、金沢に伝わる金箔(きんぱく)の製造技法「縁付金箔(えんつけきんぱく)製造」が、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録される見通しになった。事前審査を担う評価機関が、縁付金箔製造を含む「伝統建築工匠(こうしょう)の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」を登録するよう勧告した。地元からも喜びの声が上がった。

金沢市などによると、「縁付金箔製造」は400年を超える伝統の技法で、金と薄い紙を交互に何枚も重ねて打ち延ばし、金箔をつくる。薄い紙は、箔打紙(はくうちがみ)と呼ばれ、箔打ち専用の手漉(す)き和紙を加工したもの。仕込みに手間がかかることで知られている。

湿らせた手漉き和紙を機械で繰り返したたいた後、稲わらの灰汁(あく)に柿渋などを混ぜたものに漬け、さらにたたく。そうして出来上がった箔打紙を使うと、薄く、しなやかで、色つやがよい金箔になるとされる。日光東照宮の修復にも使われたという。

「ユネスコの無形文化遺産を目指していたので、ほっとした」と話すのは、「金沢金箔伝統技術保存会」の会長松村謙一さん(60)。家業の箔打ちを継いだ3代目だ。

保存会は、縁付金箔の製造技術者らを会員として2009年に発足した。14年には、文化財の保存に欠かせないものとして、国が「縁付金箔製造」を選定保存技術とした。

だが、発足から10年余り。約40人いた会員は高齢による引退が相次ぎ、20人ほどに。市や保存会が後継者に奨励金を出すなどして、育成に取り組んでいるという。「自分たちの技術が文化の一翼を担ってきた。技術を大事に引き継いでいきたい」。登録が技術継承への力になればと期待をかけた。

金沢市の山野之義市長も17日の定例会見で「職人の技を大切にしていかなければならず、関係者と相談して、できる限りのバックアップをしたい」と述べた。

勧告を受け、谷本正憲知事は「藩政期から400年以上の永きにわたり受け継がれてきた石川の伝統技術が、かけがえのない人類共通の財産として認められることに他ならず、大きな栄誉」とコメントした。

登録の正式な決定は12月となる見込み。登録されれば、県内のユネスコ無形文化遺産は「奥能登のあえのこと」「青柏祭の曳山(ひきやま)行事」「能登のアマメハギ」に続き、4件目。(沼田千賀子)

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