父・ジョージ・ハリソンが言った「エルビスはかわいそう」の意味
息子・ダニーに単独インタビュー 知られざるビートルの素顔
ジョージ・ハリソンが、ビートルズ解散直後の1970年に発表したアルバム「オール・シングス・マスト・パス」。名盤の呼び声高いこの作品が50周年を機にリミックスされ、未発表デモ音源などを加えて8月に発売された。エグゼクティブ・プロデューサーを務めたのは、息子でシンガー・ソングライターのダニー・ハリソン。「解散後、父がものすごく前に向かっていた時期のエネルギーを感じる」と話す。
ビートルズ時代、ジョージの曲はアルバムに2曲程度しか採用されなかった。「オール・シングス・マスト・パス」は、そのうっぷんを晴らすかのような3枚組みというボリュームと、完成度の高さで話題を呼んだ。曲が没になることが多い状況に「フラストレーションはあったと思う。そのエネルギーが全部一挙に出た作品」。
父に詰め寄った「なんでビートルズのこと、教えてくれないの?」
多くを語らぬ「静かなビートル」は、自宅でも寡黙だった。「なんでビートルズのこと、教えてくれないの?」。ダニーは自宅でジョージにそう詰め寄ったことがあるという。「父は聞いても一切ビートルズについて語らなかった。そしてその答えを自分で探させた。何かを定義づけられることについても嫌がっていた」と振り返る。
そんなジョージだが、「エルビス(・プレスリー)はかわいそう。彼はひとりだから」と何度か口にしていたという。
ビートルズの後期や解散後には、メンバー同士での対立があったことが知られている。だが、ダニーはこう言う。「親たちの間で、もちろん違いはあったし、クリエーティブな部分ですごく微妙な関係があったのは知っている。それでも、僕らビートルズの子どもたちは、みんな家族ぐるみで一緒に育った。親同士に考え方の違いがあっても、それも家族内の意見の相違にすぎない。ビートルズは一つの家族だった。僕はいまでもそう思っているよ」
(定塚遼)