恵比寿 ビールから生まれた街
電車を降りると、聞き覚えのある発車メロディーが耳に入ってきた。名画「第三の男」のテーマ曲。でも、今ではエビスビールのCMを連想する人の方が多いかもしれない。
潤いを求めるのどを制止し、駅前の「大沢カメラ」へ立ち寄った。店内には1964年の東京五輪の聖火リレーの様子や、駅隣にあったサッポロビール工場群など、往時の恵比寿の写真のパネルが並ぶ。
「ビール臭がよくしました。高校生だったからどんな味なのか想像していました」。副社長の大沢一彦さん(47)は当時、一帯に広がっていたビール関連の工場の間近に住んでいた。
「おしゃれ」「飲食店が充実」とされる恵比寿だが、大沢さんは「昔は考えられなかった」と笑う。恵比寿駅も、元々はビールを出荷するための積み出し専用駅で、地名も駅名も商品名にちなむ。
さらに歩くと、またも聞き覚えのあるメロディーが。「夕焼け小焼けで日が暮れて~」。全国で親しまれる童謡の作曲者、草川信は近くの渋谷区立長谷戸(ながやと)小学校の音楽教師だった。今も、校庭には歌碑が立つ。
日が暮れて、私の町歩きも一息ついた。のどにビールを与えよう。
(池田良)