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自分の居場所、探しに行こう 絵本作家・ヨシタケシンスケさん

※本記事は2021年8月29日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

二つ上の姉は、はっきりと自己主張する性格で、なんでも出来る「天才」でした。そんな姉と比べて、僕はなんにもできないと思っていました。いつもひとりでぶつぶつ本を読んでいるような子で、友達もいない。いないから寂しいとかじゃなくて、そういうものだと思っていたので、つらいという意識はなかった。

工作をすると、母親がほめてくれることがうれしくて。でも、それが反対に、怒られたくない、という気持ちを増幅させました。

人から言われたことをきちっと形にすることは得意だったので、職人になりたかった。高校の美術部の先生が勧めてくれた美術系の大学に入りました。

大学に入って初めて、人に喜んでもらえる楽しさに気づきました。好きだった宇宙服をつくって友達に見せたら、「面白い」とすごくほめてくれた。

卒業後、半年間だけサラリーマンになりましたが、ストレス発散のために、手帳にこっそりと小さなイラストを描いていました。ネガティブな性格なので、生きているのが嫌になっちゃう。毎日自分を励まし、「世の中ちゃんと探せば面白いことがある。周りにも、あちこちに転がっている」と言い聞かせるために描いてきたもの。リハビリの感覚です。

2013年に絵本デビューしましたが、色つけがうまくいかない。編集者に「デザイナーさんにお願いしましょうか」と言われ、ほっとしました。自分で色をつけない絵本作家なんて、聞いたことないですよね。でも、どんな人だって苦手なものがあり、自分でできるところを頑張れば、誰かと補い合って生きていける。

一昨年ごろから、不登校のお子さんとやり取りする機会が増えました。「逃げる」というテーマで、自分なりの思いを伝えられないか。それで今年出したのが「にげてさがして」です。

不登校のお子さんは、何かしらの理由で「学校に行かない」という選択をしている。「勉強についていけない」など理由がはっきりしている子もいれば、「なんとなく」という子も多い。この「なんだか分からないけど行きたくない」という直感は、生きるための強さがあるということ。

人として一番大事なのは「選ぶ力」だと思います。「逃げる」とは、生きるために「選ぶ」ことではないでしょうか。逃げるのは、非難されることでは全然ないんです。

逃げる人は先のことを考えていないと思われがち。でも「居心地のよい場所を探しに行くために、この場から離れるんだよね」と言い換えてあげればいい。僕が子どものころ、周りにこう言ってくれる大人がいれば、ずいぶん楽だったでしょう。だから絵本には「さがす」ことも描きました。

僕は団体行動が嫌い。チームで作業をするのも苦手。嫌いなものを全部あげて、「これだったら我慢できるかな」と選ぶ生き方をしてきました。でも、いま自分にとって居心地のよい場所を見つけられた。

息子が2人います。不登校の子を持つ親は、学校に行って欲しいわけじゃなくて、「幸せになってほしい」と願っている。まずは「行きたくない」と選べたことをほめてあげて。親も不安だけれど、幸せになることをゆっくり探してほしい。

「若いときに何をしておけばいいですか」と聞かれることがあります。自分を喜ばせるためのコレクションをたくさん集めてください。写真でも文章でもどんな形でも。それが将来の自分を救うことにつながる。

好きなものがなければ、嫌いなものでもいい。「好き」はころころ変わるけれど、「嫌い」は変わらなかったりする。強い気持ちは人を動かしてくれます。 (聞き手・林利香)

よしたけ・しんすけ 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科修了。イラストレーターなど多岐にわたって活動し、2013年、初の絵本「りんごかもしれない」が大ヒット。ベストセラー多数。

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