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麻生久美子さんの「一日一生」 毎朝生まれ変わって、明日を楽しむ

※本記事は2021年10月1日に朝日新聞デジタルで公開された連載を再編集しています。

「人生100年時代」が近づくいま、50歳はちょうど中間地点です。変わる身体、働き方、家族との関係など……。今回は、ラブコメや社会派警察ドラマなど、年々、活躍の幅を広げている俳優の麻生久美子さんにインタビュー。家庭や職場、地域で大事な役割を担うミドルエイジの女性たちの「いま」と「これから」を見つめ、自分らしく年齢を重ねていくことについて考えます。

俳優 麻生久美子さん

「あの、よかったらメザシ、いかがですか? 子どもが釣ったものなんですけど……」

差し出されたホイルの上には、カリカリに焼かれた麻生さんお手製のメザシが一列に並んでいた。一口かむと、香ばしさと優しい塩味がほんのり広がった

誰にでも気さくに話しかけ、よく笑う。おだやかな、飾らない言葉の端々に、日々の生活を大切にしている様子がにじむ。この人がチームにいたら、現場は絶対に楽しいはず。話題作への出演が相次ぐのも、人柄に魅了される人が少なくないからではないか。

最新の出演作は、NHKドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」。自身の代表作でもあるドラマ「時効警察」シリーズで15年来の盟友・オダギリジョーさんが脚本・演出を務め、鑑識課の警察官と相棒の警察犬・オリバーが、奇妙な事件の解決に挑むストーリーだ。

麻生さんは自称「仕事のできる上司」で、主人公の先輩役。撮影の1カ月前、役づくりにと試しに前髪を切り、オダギリさんに写真を送ったところ、「すごく面白がってくださって。届いた台本を見たら、前髪を切るのが好きで、何かにつけて前髪を切ってくるキャラになっていました」と笑った。

見どころを尋ねると、「オダギリさんの人徳なんでしょうけど、とにかくキャストが豪華!」と目を輝かせ、「永山瑛太さん、橋爪功さんにくっきー!さんに……。皆さん個性的で最高です。主演の池松壮亮さんはニュートラルで、うまくバランスを取っているんですよね」。

また、オダギリさんは役者の時と監督の時とでは「全然違う」と話す。「監督の時はすごく優しくて、気遣いの人に変身するんですよ。あれこれ言わないから、皆さんのびのびお芝居されていて。世界観も普通のドラマとは違うし、編集も、こんな見せ方するの?というところがある。そのセンスの良さがすごいなと」

「役者でありながら、役者ではない立ち位置」

個性派の面々が自由な演技を繰り広げる中、麻生さんだけはオダギリさんから細かい演出をつけられた。長年の信頼関係あってこそだろう。

「撮影前に言われたんです。私にだけは色々と言うことで、『本当はここまで求めているんですよ』というのを皆さんに見せたいと。だから緊張していたんですけど、実際やってみると、やっぱりご本人も役者だから、微妙なニュアンスを説明するのが上手で。それに応えたくて、『こうですか? それともこうでしょうか?』って。そのやりとりが本当に面白かった」と振り返った。

もう一つの出演作は、公開中の映画「マスカレード・ナイト」(東宝)。東野圭吾さん原作の「マスカレード」シリーズで、映画化され大ヒットした「マスカレード・ホテル」に続く2作目だ。木村拓哉さん演じる刑事と、長澤まさみさん演じるコンシェルジュが、ホテルで開かれる大みそかのカウントダウンパーティーに集まる500人の客の中から殺人犯を捜し出す。初共演だった木村さんの印象を聞くと、間髪入れず「すっごーく、かっこよかった! ふふふ。座長としてもすばらしいです。役者でありながら、役者ではない立ち位置で全体を見ていらっしゃって」と絶賛した。

仕事の幅を広げながら、私生活では9歳と4歳の子どもを育てている。「毎日やることがたくさんあって、自分の時間は少なくなりましたが、子どもたちがもう少し大きくなったら取り戻せるかなと。年齢を重ねるにつれて時間の使い方もうまくなったのか、オンとオフがはっきりするようになって、気持ちの面では充実しています」

やるべきことが増えてきたら、「まずはリストに書き出して、心を落ち着かせます。あとは掃除。部屋がきれいだと、頭も整理されやすくなる気がしませんか?」。

コロナ前は家族でキャンプによく出かけた。「外で過ごすと、自然に感謝する気持ちが生まれますよね。このままだと地球が心配。子どもたちの未来は大丈夫かなって」

日々の暮らしの中でも、環境や社会に対してできることに、肩ひじを張らずに取り組んでいる。むやみに物を増やさないよう、買い物は吟味し、子ども服はママ友同士でお下がりをあげたり、もらったりする。トレードマークともいえる長い髪はいつか、ヘアドネーションしたいと考えている。「9歳の娘も髪を伸ばしていて。一緒に寄付しようねと話しています」

大事にしているのは、「一日一生」とも言える考え方だ。「最近整体の先生から『毎日、生まれ変わっていると思って』と言われて、なるほどと。もともとマイペースで、初動が遅いタイプなんですが、やるべきことはぱーっと終わらせて、夜はパタンと寝る。翌朝起きたら、新しく生まれたんだから、昨日のことは引きずらない。そういう風に心がけていたら、より前向きになれて、明日が来るのが楽しみになってきたんですよね」とほほえんだ。(前田育穂)

あそう・くみこ 1978年生まれ。千葉県出身。今村昌平監督の作品「カンゾー先生」のヒロイン役で注目され、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。その後もドラマ「時効警察」シリーズ、映画「夕凪(なぎ)の街 桜の国」など、多数のドラマや映画に出演。

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