Presented by サッポロビール株式会社

伊藤博文や渋沢栄一も訪れた迎賓館 新潟で復元へ

※本記事は2020年11月6日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

新発田出身の実業家・大倉喜八郎が東京・向島に建てた「蔵春閣」の移築工事がJR新発田駅近くの東公園で本格的に始まった。2022年春に完成する予定で、かつて政財界の要人をもてなした迎賓館を復元し、市民の交流の場や新たな観光拠点としての活用を目指す。

喜八郎は大倉土木組(現・大成建設)、札幌麦酒会社(現・サッポロビール)など一代で財閥を興した明治期の実業家。蔵春閣は別邸として1912年に建てられた。明治の元勲・伊藤博文や渋沢栄一ら明治・大正期の政財界の要人、国内外の著名人が訪れた。

木造2階建ての1階は椅子が並ぶ洋式の食堂、2階は33畳の和室大広間があった。金色の壁や天井、シャンデリアなど和洋折衷の豪華な内装が特徴。関東大震災や太平洋戦争の空襲にも耐え、戦後は飲食店やホテルの付属施設などとして使われた。

2012年に解体されたが、管理する大倉文化財団が「ぜひ、喜八郎のゆかりの地に」と新発田市に寄贈を申し出て、喜八郎が寄贈した土地にある東公園に移築されることになった。喜八郎が創業した大成建設が、財団で管理していた蔵春閣の建築資材を使い復元工事を担う。椅子やシャンデリアなどの調度品の展示も検討している。

10月19日に開かれた安全祈願祭には、二階堂馨市長や山内隆司・大成建設会長らが参列。喜八郎のひ孫の大倉喜彦・同財団理事は「蔵春閣はひいおじいさんが愛していた建物。ここに戻れて、良いご縁ができてうれしい」と話した。

市は、移築後に一般公開し、広く活用することを検討している。市民が交流できる食事スペースや、周辺の武家屋敷などとともに観光資源として整備を進める方針だ。二階堂市長は「新発田の宝になれる」と期待する。

移築にかかる費用は主に財団の負担だが、地中の障害物の撤去や建物を覆う塀の設置費用などは市の負担となる。市は8月の市議会臨時会で補正予算として4013万円を計上した。

ただ、この予算は移築にかかる最低限の経費で、一般公開のために必要な火災報知機などの保安設備の設置にはさらなる費用がかかる。二階堂市長は「新年度予算に向けて見直す余地はある」とし、市の担当者も「必要経費や活用法については今後も議会などで検討したい」としている。(高橋俊成)

この記事をシェア

facebookにシェア
twitterにシェア
tLINEにシェア

SHARE

facebookにシェア
twitterにシェア
tLINEにシェア

オススメ記事
RECOMMENDED

↑TOPへ