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酒を飲むシーンが印象的 落語家・瀧川鯉八の選ぶ映画「息子」

※本記事は2021年10月8日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

■上京、就職…心に染みたビールの味

岩手に暮らす父と、上京して自由に過ごす末っ子・哲夫の家族の物語。でも家族より、哲夫が働く工場のおじさんたちとのシーンのほうが印象的です。僕も田舎から出てきているし、重なるところがあったのかも。また、全編を通してお酒を飲むシーンも心に残っています。

鉄工所で肉体労働のアルバイトをする哲夫。従業員のおじさんたちから期待されていなかったけれど、やがて正社員になるんです。この仕事を哲夫のような若者が選んだことで、おじさんたちは自らの存在を認めてもらえたとうれしくなり「飲みに行こう」って哲夫を誘います。居酒屋で乾杯して、笑顔のおじさんたちと照れくさそうな哲夫。今まで見た映画の中で一番ビールがおいしそうに見えました。

一方で、お母さんの一周忌で親戚が集まって飲むシーン。最初は和やかでも、酒が回ると誰かが嫌なことを言い出す。僕もふるさとの鹿児島に帰ると親族に会えて最初は楽しいものの、時間が経つとそんな感じになることも。皆で集まるとき、長時間はよくないのかもって思います。

上京してきた父と2人、哲夫の狭いアパートで缶ビールを飲むシーンもよかった。僕の父は真面目で頑固。落語家になるときもこっぴどく怒られるかと思いきや、「働いている姿が見られる」と意外にも喜んでくれました。最近、僕の落語を配信で見ているようですが「母さんの話はするのに、俺の話は全然しないんだよ」って、母親経由で感想が送られてきます。父の皮肉屋なところとか、気付いたら僕も似てきたなあ。(聞き手・片山知愛)

たきがわ・こいはち 落語家 2006年、瀧川鯉昇に入門、10年二ツ目、20年に真打(しんうち)昇進。21年、花形演芸大賞金賞受賞。独特の世界観の創作落語を得意とする。
■「息子」(1991年) 監督=山田洋次△脚本=山田洋次、朝間義隆△出演=三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見ほか

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