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この「答え」忘れない 「LOVE LIFE」に主演、木村文乃

※本記事は2022年9月2日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

約20年、構想を練り続け、脚本・編集も手がけてこの作品を完成させた深田晃司監督は、彼女を主人公の妙子に選んだ理由をこう語っている。「色んな候補の名前が出たが、写真を見て『あ、妙子だ』と直感的に思いました」

本人は、ちょうど「過去の自分から脱したい」と思っていた時期だったという。「お芝居を仕事としか捉えていない自分に嫌気がさしたタイミングだったんです。『こう演じれば、こう見える』と器用になっていて、面白みを感じられない自分がいた。自分が本当にしたい芝居は何かと悩んでいたときに、『答え』がやってきました」。主演俳優と監督の運命的な巡り合いだった。

シンガー・ソングライターの矢野顕子さんの同名楽曲をモチーフに、愛や人生の本質を問う物語。大沢妙子(木村)は再婚した夫・二郎(永山絢斗)と息子の敬太と幸せな日々を過ごしていた。だがある日、悲しい出来事が彼らを襲う。そんなとき、妙子の前の夫で、ろう者のパク(砂田アトム)が現れる。彼は敬太の実の父親だった。

「脚本を読んで、これは監督がどういう風に作品を作りたいのかを聞いて、その世界に入るだけだなと思いました。一冊の小説を読んでいるような、素敵な脚本でした」

とはいえ、これまでドラマ出演が多かったために「深田監督の映画の現場で、自分の芝居が通用するのか不安でした」。撮影前に監督によるワークショップやリハーサルの時間を密に過ごすことで、作品の世界観を共有し、監督の求める「余分な芝居の要素をそぎ落とす」ことを目指した。「現場に入るときには、『家族だもん』という感じでした。芝居を通して監督とコミュニケーションを取ろうとしている自分がいて、うれしかったですね」

悲しみに沈む妙子はパクとの再会を機に、彼の世話をするように。「妙子も含め登場人物は誰の周りにもいるタイプ。押し殺している気持ちを代弁するような作品です」

深田監督との仕事を通して得た「答え」とは何か。「役とはいえ、人として生きることの楽しさ。この感覚を忘れたくない」
(文・細見卓司 写真・伊ケ崎忍)

きむら・ふみの 1987年生まれ、東京都出身。2006年の映画「アダン」で俳優デビュー。14年にエランドール賞新人賞。主な出演映画に「ポテチ」「くちびるに歌を」「ザ・ファブル」など。「LOVE LIFE」は9日公開。

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