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直球のポルノグラフィティ ポップで疾走感 5年ぶりアルバム「暁」

※本記事は2022年9月1日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

荒ぶったロックスターになりたい――。

ポルノグラフィティの2人はかつてそう思った。デビューは1999年。ロックが今よりも態度や生き方、マッチョイズムと結びついていた時代だった。

「例えば、昔のロックミュージシャンが観客にビール瓶を投げるとか、酒を飲んで駄目なライブをやるとか、そういうことも含めてロックやバンドに憧れていた」。ギターの新藤晴一はそう語る。

メジャーデビューシングル「アポロ」がヒットすると、「ミュージック・アワー」「サウダージ」「アゲハ蝶(ちょう)」と、ポップで疾走感のある楽曲で次々とヒットチャートを席巻した。

一方で、決して荒ぶったロックスターとはみなされず、トガりの少ないポップバンドと世は認識した。そうした世間のイメージにはズレを感じていた。「理想と折り合いがつかず、『自分たちは違う』と思っていた時期があった。また、下積みをしてきたのにそう思われず『作られたバンド』のように思われているんじゃないか、ということなど、色々なコンプレックスを抱えていた」とボーカルの岡野昭仁は明かす。「自分たちがどちらかというと品行方正だということに気がつくのに10年はかかりました。10年かかって、ようやく身の程を知ったんです」

8月には新アルバム「暁」をリリースした。ポルノグラフィティらしいポップで疾走感のあふれる王道の楽曲が並ぶ。

20周年を迎えた2019年、バンドは「充電期間」に入り、2年間の個人活動を経て、昨年復活した。今作は、再スタートを告げる5年ぶりのアルバムとなった。

楽曲「ブレス」では「ポジティブな言葉であふれているヒットチャート 頼んでもないのにやたら背中を押す」と歌う。無責任な夢や希望を語ることを避けつつも、この曲自体が人間を肯定する内容の詞となった。「『応援』という形を取らない肯定があってもいいと思う。『君はすごいよ』『未来は良いよ』とは書かない暗い曲も、人を肯定して元気づけることがある」と新藤は語る。

新たな試行もみられる。新藤は「過去の焼き直しをしないこと」を今作の詞作のテーマにした。「何百曲も書いていると、どうしても過去の自分と被ってくる。2、3年後に古くなっていてもいい。賞味期限が短くてもいいから、今に響く詞を書こうとした」と話す。岡野は曲のトラック(伴奏)作りを別の人に託し、そのトラックにメロディーを乗せる、という新たな試みをしたという。

とはいえ、今は新しさよりも、ファンが求めるポルノグラフィティを提供したいと強く思う。岡野は語る。「音楽を掘り下げて探求する『音楽バカ』みたいなモチベーションは、正直僕にはない。昔は変に取り繕おうとしてたけど、ないものはない、と割り切った。求める人に音楽を作り、歌いたい。突き詰めれば、ただそれだけなんです」。覚悟はできた。今はてらいなく、世間やファンの構えるミットに直球を投げ込める。
(定塚遼)

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