【ブックディレクター幅允孝さん】本の価値を知ってもらうためにライブラリーをつくるPR
何でもデジタルに置き換えられる時代。ご多分に漏れず本もそう。でも、リアルに本と出会う場所に足を運び、本を手に取り、選び、求め、読み深めることで、書物は自分の頼れる相棒になる――。
そうした本の価値を知ってもらうため、ブックディレクターの幅允孝さんは、様々な人が集まる場所にライブラリーを作り続けています。公共図書館や学校図書館だけでなく、病院の中に、ホテルの中に、カフェの中に。
書き手が必死になって絞り出した言葉を、読み手が何とかすくい取ろうと必死で読むことで得られる実感。自分の中に取り込まれるもので、自分自身にどんな化学反応が起こるのかという楽しみ。
そしてその感覚は、「食事」と「お酒」にも通じると言います。
私たちが本を読む意味、本の楽しみ方、本と食事とお酒の関係、さらには今、読むのにおすすめの本まで。幅さんにたっぷりとうかがった贅沢(ぜいたく)な時間を、ご一緒にお楽しみください。
人が書店に来ないのなら人がいるところに本を運ぶ
そこに集まる人にインタビューをして、その人たちにとって必要な本を選び、調達し、分類して配置する。これが選書の流れですが、幅さんの仕事はそれにとどまりません。
哲学や心理学など「没入」に時間がかかる書架の前のカーペットは毛足を長くし、重い芸術書の近くには本をおける台を設置。来館者が「気づいたら読んでいた」という環境をつくるため、本の周囲の緻密(ちみつ)な空間作りにも心を砕きます。
本と人との出会いの場を全国あちこちに生み出して20年余り。幅さんが今の仕事を始めるきっかけとなったのは、2000年に起きた「アマゾン・ショック」でした。
アマゾンの日本法人がサービスを始めた当時、六本木の書店で働いていた幅さんは来店者が減り、書店が「冷たい場所」になっていくことに危機感を覚えました。
「本っていうのは、著者以外の誰かが開いて初めて本たり得ると思っています。立ち読みでもいいから本が他者の目にさらされることで、少しずつ本に熱がたまっていく。だけどその機会が減っていったんです。人が本屋に来ない。だったら人がいる場所に本を持って行こう。そう考えたことが今も続いています」
本を読むことは信頼に足る何かを得ること
時間がかかることが敬遠される今、じっくりと向き合うことが求められる「本」に幅さんがこだわるワケ。
それは「本を読むことは自分だけの意見をつくるとき頼りになる」から。
著者名が書いてある、注釈が振られている、文献の出自が明記されている。そして紙の本は書き直しができないのでよく推敲(すいこう)されている――
「本は基本的に信頼できるんです。だから本に書かれたことをいくつか統合させてみると、ひとつの事象を様々な角度から眺めることができて『あっ、こういうことなんだ』と自分の中に一つの実像ができる。幾つかの信頼できる本というものを通して作られた自分の意見は大切にできるな、と思えるんです」
本は気になったところで立ち止まり、じっくりと考えられ、読み戻ることもできる。コンテンツに接している時間を自らコントロールできる。そうして得たことをもとに、時に迷い間違えながらも、自分の頭で考え、自分自身で選ぶ。それは「すごく自由で楽しい」ことなのです。
あらゆるコミュニケーションが人との「シェア」によって成り立っている現代において「孤独に陥らざるを得ない読書という行為は、実はとても稀有(けう)」だと幅さん。
「でも、だからこそ、気になるものを手にとって気楽な気持ちで色んなものを読んでみればいいんです。重要なのは、自分がその本の著者と1対1でどう対峙(たいじ)して何を受け取ったか、なので、人の意見や周りの人気ばかりを気にする必要はない」
アルゴリズムに囲まれ、自分で決めているようで決めさせられていることが多い中、本を読む時には自発的でいられることも本の醍醐味(だいごみ)。同時に、「これからの時代に『自発的』であることはすごく重要だ」と幅さんは考えます。
本、食事、お酒・・・自分に取り込み「実感」できる喜び
確かなものを自分で選び、自分に取り込み、自分をつくっていく――
幅さんが本を読んで得る感覚。それは、食事とお酒においても感じていることでした。
「世の中って不確かだったり、わからないことが多かったりするけれど、この今の感触は確かだなと実感できる、体が喜ぶ感じというのは、本と同じように、食事とお酒に関しても感じています」
幅さんが本や食事やお酒を楽しむスタイルはとても自由。ある程度、長くて深い本に向き合うにはそれ相応の筋力がいる一方、リラックスしている時の方がすっと入ってくるような本もあるそうで、お酒を手に本に目を落とすことも多いそう。
これから迎える秋。
涼やかな空気の訪れとともに、本に手がのびる人も増えるのではないでしょうか。
そうした季節に合わせて、サッポロビールでは「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」の缶商品を毎年、期間限定で発売しています。
通常は飲食店でしか味わえない味覚を、それぞれの「秋時間」とともに楽しんでほしい――そうした願いが込められ、2022年も発売が始まりました。
商品名が表している通り、美しい「琥珀色」と「香ばしい薫りとコク」が特徴です。
本と同じように食事もお酒もたしなむ幅さんに、琥珀ヱビス プレミアムアンバーを味わっていただきました。
「じわじわ、ゆったりと飲むのにいい感じですね」
琥珀ヱビス プレミアムアンバーは麦芽の中がカラメル化し、宝石のように美しいことから名称がつく「クリスタル麦芽」を一部に使用しています。
クリスタル麦芽が琥珀ヱビス プレミアムアンバーの琥珀色をもたらしているのですが、これは麦芽に段階的に熱を加えてできるもの。
「じっくりローストしていることがわかる甘みと苦みがあります」
幅さんの表現は、琥珀ヱビス プレミアムアンバーのこだわりの製造過程を的確に表していました。
琥珀ヱビス プレミアムアンバーは、本とともに、深まりゆく秋を過ごす時間のよき「相棒」となりそうです。
時間の流れが遅い空間を作りたい
様々な場所にライブラリーを作ってきた幅さんに、これから取り組みたいことを尋ねると「時間の流れが遅い場所を作りたい」という答えが返ってきました。
すごい回転数で動いているところから少し離れて休めるところを作らないと、人は立ちゆかなくなってしまうのではないかという懸念からきています。
「あとは、本を読むということが、まだまだ意味や価値があるということだと少しでも伝わればいいですね。今、我々が溺れそうな情報の海とは違う場所を泳ぐたのしさををうまく伝えていけるといいなと思っています」
幅さんおすすめの3冊はこれ!
呼吸をするのと同じような感覚で本とともにあるという幅さん。最後に、今、おすすめの3冊を、おすすめする理由とともに教えていただきました。
『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳 「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』
メアリアン・ウルフ著、インターシフト
デジタルで読むことと紙で読むことについて、それぞれ脳のどの場所をどのように動かしているかという違いが明快に書いてある本。今の人は走り読み、斜め読みばかりで「深く潜って読む」ということに対しての筋力がかなり衰えてる状態ですが、それをどうしたら取り戻せるのか。自分が「読む」という行為にどんなふうに向き合っているのかを客観視する意味ですごくユニークな1冊です。
『大きな字で書くこと』
加藤典洋著、岩波書店
加藤典洋さんという文芸批評家が書き残した最後の本です。本というものに生涯をかけてすごくしっかりと対峙していた人間が、生き方の問題として、本とどう関わり、どんな経験をして、どういうふうに自分と本の距離みたいなものをつくってきたのかということがすごく真摯に書かれています。軽やかなんですけど素晴らしいエッセーで、装丁も美しい1冊です。
『ON READING』
ANDRE KERTESZ、Penguin Books
アンドレ・ケルテスという写真家が世界中のいろいろな場所で本を読む人、文字を読む人の写真だけを集めて1冊にまとめたものです。様々な出版社のバージョンもあるのですが、編集はペンギンブックス版が好きです。読む言語や時代はばらばらだけれど、人は読むという行為をずっと続けているということを知る写真として考えさせるところが多いです。自由に本を手にとり、そこから何をその人が得て、日々にどう作用させていくのかを客観視する上で、すごく大事にしている1冊です。
アンケートに答えて応募すると
抽選で琥珀ヱビス プレミアムアンバーが当たる!
ストップ!20歳未満飲酒・飲酒運転
今しか味わえない「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」
お店の味わいをご家庭でいかがでしょうか――。サッポロビールは、この秋、「琥珀ヱビス プレミアムアンバー」をリニューアルしました。普段はこだわりの飲食店でしか楽しめない琥珀ヱビスですが、350mlと500mlの缶を9月6日から期間限定で発売します。麦芽100%はもちろんのこと、一部に上質な「クリスタル麦芽」を採り入れ、秋冬の食材に合った「香ばしい薫り、深いコク」を実現させました。泡の色まで美しく、クリーミーな仕上がりになっています。
読書の秋にぴったりな琥珀ヱビス プレミアムアンバーとともに、ゆっくりと流れる贅沢な時間を、自由なスタイルで味わってみてはいかがでしょうか。