Presented by サッポロビール株式会社

ラジオの生き残り戦略「内容を記事化しネット配信」 若年層リスナーを開拓できるか

※本記事は2018年6月23日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

若者のラジオ離れが進む中、新たなリスナーをどう掘り起こすか。ラジオ局が知恵を絞っている。そのひとつが、放送した番組から話題を呼びそうな内容を「ニュース」や「読み物」として活字化し、インターネットに発信する試みだ。新たな収入源として期待を寄せる局もある。

「TOKYO FM」が毎週金曜午後1時~4時半に生放送している「よんぱち―48HOURS―」。今月8日、スタジオに隣接した控室では、フリーライターの森田浩明さん(42)がパソコンに向かっていた。

森田さんは、同社などが3年前に立ち上げたニュースサイト「TOKYO FM+」の執筆者の一人。この番組の「番記者」として、放送を聴きながら、話題を呼びそうな部分を文字に起こす。

この日まとめたのは、ゲストの是枝裕和監督が語った、カンヌ国際映画祭の最高賞を受けた映画「万引き家族」の裏話など3本。記事は「ヤフーニュース」などにも配信された。

森田さんは「ラジオは話し手とリスナーの距離が近い。記事が拡散することで、両方が嫌な気持ちにならないようにしたい」と話す。文字に起こすと、もとのニュアンスより強い印象になる場合がある。(笑)を入れるなどして、スタジオの雰囲気が伝わるよう工夫しているという。

こうした取り組みには、番組をより多くの人に知ってもらい、リスナーになってもらう狙いがある。

博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所の今年の調査では、アプリなどで放送を聴ける「radiko(ラジコ)」を利用している人は約3割。ラジコには、放送後1週間さかのぼって聴ける「タイムフリー」機能もあり、記事で取り上げられた番組を後から聴くこともできる。

スタジオの控室で生放送中の番組を聴きながら、話題になりそうな部分を文字に起こす=8日、東京都千代田区の「TOKYO FM」

「ニュースサイト、役割大きい」

背景には、ラジオを取り巻く厳しい状況がある。

NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」によると、平日、1日の中で15分以上ラジオを聴いた人は1995年は17%だったが、2015年は12%に減った。20代では、13%から4%に激減した。リスナーの高齢化がうかがえる。

「『ラジオって何?』という人もいる時代。若者が日常的に触れているニュースサイトの役割は大きいと思う」と、「TOKYO FM」の宮野潤一・編成部長。送り出す記事は、週に70本以上。読まれた記事のランキングは社内で共有し、番組制作の参考にしているという。

「ニッポン放送」も、自社サイトの記事を充実させる一方、約1年前から外部への配信を本格化させた。「『こんなことを番組でやってたんだ』と、多くの人に知ってもらう戦略」と浜原晋介・デジタルソリューション部長。「ラジオはネタの宝庫。記事化が追いつかずもったいない」と広報担当者は話す。

効果はあるのか。

約2年前から記事の外部配信を始めた「TBSラジオ」は、「若い人にはラジオの入り口として一定の役割を果たしてくれていると思う」(担当者)という。

新たな収入源として、期待を寄せるところもある。

「ニッポン放送」は、「聴いてもらうのが大きな目標だが、記事がたくさん読まれれば、ネット広告の収入につながる」。「J-WAVE」の渡辺岳史・編成部長は、「番組作りにはコストがかかる。流しっぱなしだった情報をどうお金にできるのか、考えていきたい」という。(丸山ひかり)

Media Times(メディアタイムズ)

■1日の中でラジオを聴いた人の割合の推移(年齢層別、平日)
1995年2005年2015年
16~19歳1362
20代1394
30代16106
40代21149
50代241913
60代212418
70歳以上151921
(NHK放送文化研究所の「国民生活時間調査」から)

この記事をシェア

facebookにシェア
twitterにシェア
tLINEにシェア

SHARE

facebookにシェア
twitterにシェア
tLINEにシェア

オススメ記事
RECOMMENDED

↑TOPへ