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現代の名工、県内2人 マツダと日立製作所から

※本記事は2019年11月9日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

卓越した技能を持つ「現代の名工」に、県内からはマツダ防府工場(防府市)の渡辺康憲さん(52)と日立製作所笠戸事業所(下松市)の渡辺智二さん(54)の2人が選ばれた。11日に東京で表彰式がある。

鉄板の表面をたたいて整える渡辺康憲さん=2019年11月5日午後1時36分、山口県防府市のマツダ防府工場、滝沢貴大撮影

マツダ防府工場 渡辺康憲さん(52)

手のひらだけの感覚で、車のボディーとなる鋼板全体のほんのわずかな凹凸やひずみを感じ取り、工具を使って思い通りの形状に整える。

「ひたすら数をこなし、繰り返し作業してきた結果」と話す。

下関市の高校を卒業後、1986年にマツダに入社し、20年近く車体課で勤務。溶接工や仕上工として、自動車生産に欠かせない金属加工技術を磨いた。

2005年からは教育チームに移り、若手に加工技術を伝える。渡辺さんの指導を受けた社員はすでに1千人近くにのぼる。

精密機械が並ぶ自動車工場であっても、最後の工程では人の手が欠かせないという。「誰かが伝えていかなければ技術は失われてしまう。現代の名工に選ばれ責任感が増した。先輩たちの技能を『マツダの宝』として伝えていきたい」(滝沢貴大)

日立製作所笠戸事業所の渡辺智二さん=2019年11月6日午後3時21分、山口県下松市、三沢敦撮影

日立製作所笠戸事業所 渡辺智二さん(54)

英国向け高速鉄道車両の大型受注などで増産が続く日立製作所笠戸事業所。受注量の急増に対応する生産ラインの改善を主導した。

ボディーを造り、塗装を施し、座席などの内装(艤装(ぎそう))を整え、1台の車両を完成させていく。「その生産ラインは一つしかなく、数珠つなぎの一本道でした」と振り返る。

製作時間の長い新幹線も、短い通勤電車も同じラインを縦列でゆっくりと進む。それでは海外車両の生産が追いつかない。工場の限られた敷地内では難しいとされた2ライン化を実現。生産能力を飛躍的に向上させた。

光市の出身。高校に通う電車の窓から工場が見えた。「社会の基盤になるような大きな仕事がしたい」。そんな夢を抱いて就職した。

一つの職種に固定しがちな業界で、溶接や塗装、内装の各業務を経験。「多能工」として車両製造の工程を全体的に見渡せる能力が困難な課題解決に役立ったと感じている。

笠戸事業所では16人目の名工だ。先人たちが培った技術を受け継ぎ、多くの仲間たちと持てる力を合わせて造り上げる。「新幹線は1人ではつくれません。鉄道車両製造はチームプレー。私は工場を代表して選ばれたのだと思います」。控えめな笑顔で喜びをかみしめた。(三沢敦)

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