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新日本プロレス、なぜ復活? オランダ人社長が戦略語る

※本記事は2019年3月22日に朝日新聞デジタルで掲載されました。

プロレスが再び盛り上がりを見せている。力道山やジャイアント馬場、アントニオ猪木らが礎を築いてきた日本のプロレス。かつてはテレビのゴールデンタイムで放送されるなど、人気番組の一つだった。2000年代に入り「K―1」や「PRIDE」など格闘技の人気におされて、下火になった時期もあった。

それが、最近のプロレス会場には女性やファミリー層のファンが詰めかけるなど、一昔前の男性ファンばかりのいかついイメージから、変わりつつある。その業界をリードしているのが新日本プロレス。社長にはオランダ出身のハロルド・ジョージ・メイ氏が就く。

年150回の興行は常に盛況。試合のライブ配信などを行う動画サービスは、世界各地から加入者が集まっている。昭和の日本で人々を熱狂させたプロレスが、なぜ今、再ブームを迎えているのか。メイ社長に聞いた。

新日本プロレスの会社説明会で学生たちに向かって話すハロルド・ジョージ・メイ社長=2019年3月18日、東京都文京区後楽1丁目、山本裕之撮影

「暗黒時代」から脱却したのは…

《日本のプロレスとの出会いは8歳の時。父の仕事の都合で来日し、日本語も英語もわからなかった少年にとって、テレビで見たプロレスは衝撃的だった》

メイ社長 「当時はオランダ語しか話せませんでした。テレビでバラエティー番組やニュース番組を見ても意味がわからない。そんな時、夜のゴールデンタイムにテレビで放映されていた『ワールドプロレスリング』を見たんです。プロレスには言葉がいらない。楽しかったですね。おやじと一緒にテレビを見て、先日亡くなったザ・デストロイヤーさんやアブドーラ・ザ・ブッチャーさんに熱中しました」

《サンスターの執行役員や日本コカ・コーラで副社長を務め、タカラトミーでは社長として手腕を発揮した。経営のプロとして、子どもの頃に大好きだった新日本プロレスからトップ就任の声がかかった》

メイ社長 「プロレスに関われるうれしさと同時に、迷いもありました。会社の中に入れば、好きなプロレスも課題が見えちゃうじゃないですか。でも、私が培ってきた経験や知識、人脈が使えるなと思ったんです。海外にも可能性は広がっているし、色々な企業とタイアップもできる。僕が今まで入ったどんな会社よりも小さい会社ですけど、大きな魅力を感じました」

《1972年にアントニオ猪木さんが旗揚げした新日本プロレス。「明るく楽しく激しいプロレス」を掲げた全日本プロレスと異なる「ストロングスタイル」を売りに、藤波辰爾(たつみ)、長州力らスターレスラーが次々と誕生した。テレビのゴールデンタイムで放映されていた80年代は絶好調だったが、2000年代に入って低迷。社長自ら「暗黒時代」と呼ぶ不振から脱却するきっかけは経営体制の変化だった。12年にカードゲーム会社のブシロードグループパブリッシングが株式を取得したことで息を吹き返した》

メイ社長 「今までのプロレスは興行が中心でした。おかげさまで新日本プロレスは年間150試合がパンパンで、たくさんのお客様に来てもらっています。興行はパーフェクト。これ以上は試合を増やせないし、このままでは会社が広がっていかないわけです。では、どうするか。その一つが動画配信でしょう。会場に来られないお客様にも楽しんでいただく。会社を進化させるには、新たな可能性にチャレンジすることが必要です」

新日本プロレスの学生向け会社説明会は格闘技の聖地と呼ばれる「後楽園ホール」で開催された=2019年3月18日、東京都文京区後楽1丁目、山本裕之撮影

会社説明会に500人応募

《新日本では3年前から新卒採用を導入した。今月18日に後楽園ホールで開いた会社説明会には、約500人から応募があった。説明会では実際のプロレスの試合を学生たちに見てもらい、人気レスラーの棚橋弘至がリングに上がって「みんなで素晴らしい新日本プロレスをつくろう」と呼びかける演出も。現在の社員数は79人。この3年で約50人も増えている》

メイ社長 「新卒の学生を採用する狙いは若い発想が必要だからです。女性や子供たち、外国の方々に、どうやったら新日本を好きになってもらえるか。日本最大のプロレス団体で、業界をリードしている我々が新たな道を開かないといけないと思っています。こんな面白い会社説明会は他の会社にはないでしょ。『楽しかった』とSNSでつぶやいてもらえれば新日本に興味を持ってくれる人がさらに増えますし、優秀な人材も集まってくる。人材の確保は大変ですから」

《かつては男性中心の趣味だったプロレス観戦。今、新日本の観客の4割は女性で20、30代が中心だ。動画サービスの会員数は約10万人に上り、海外からの加入者が約半分を占める》

メイ社長 「プロレスはグローバルに通用するコンテンツなんです。日本では野球が人気ですけど、世界で野球をやっている国は7カ国ほどでしょう。プロレスは、やっていない国を探す方が難しい。動画なら英語やスペイン語の解説を付けることができる。ポテンシャルは無限です。日本スタイルのプロレスがどこまで世界で通用するか、チャレンジしていきたいと思っています」(構成・波戸健一)

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